モンテッソーリアジア2023台湾大会、2日目と3日目は学びの多い講義が盛りだくさん!基調講演以外は、同時に3部屋で講義が行われます。タイトルを見ただけでもワクワクする内容が多いものの・・・私、日本語しかわからないという弱点がありまして…笑。講義ののほとんどが中国語、たまに英語という環境で、通訳の方がいる講義もありますが、それ以外はGoogle翻訳を使ったり、スライドの写真を撮って変換したりしてなんとか理解するという状態。全てを聞き取ることができず、若干の消化不良。
なので、レポートと言うほどしっかりしてものは書けず申し訳ない限りですが、松浦先生と根本先生の講義を中心に、私が理解できたものや印象に残った講義を少し紹介します。まずは基調講演から!
基調講演:Biff Maier(ビフ・マイヤー)先生
基調講演は、アメリカのモンテッソーリ協会(AMS)で講師養成をされているビフ先生。
テーマ『定着させる』です。子どもの経験、知識を子どものものとすること、そのために教師がやるべきことを「ゴリラ接着剤」を用いてお話してくださいました。斬新な切り口!笑
強力接着剤を使う時の3ステップ!!
Step1:表面を準備すること
Step2:均等に接着剤を塗布する
Step3:しっかりくっつける(定着させる)
ここだけを見ると、完全に接着剤の講演ですね笑。
Step1:表面を準備すること。
つまり、記憶にまつわる脳の部分を準備すること。記憶には外部記憶と内部記憶があります。内部記憶は、自分が体験したり経験したことが記憶として残り、無意識に思い出すような記憶です。「吸収精神の時期」である誕生後から3歳くらいまでの間に、さまざまな体験や経験ができるようにしましょう。それがなんだかわからなくても、無意識に印象を溜めこみ、それが内部記憶となって、その後の学びに繋がっていきます。
Step2:均等に”学びの”接着剤を塗布する。
モンテッソーリ教育で用意されているおしごとを、まんべんなく子どもに提供します。そのために、大事なことが4つ。いつも大人の関わり方や姿勢としてお伝えしていることです。
①準備100%
大人がきちんと教具の使い方や活動の目的を理解し、正しく提示できるように学んでおくこと。そして、そのおしごとに必要なものが整い、環境に不足がないこと。
②困難の孤立化
モンテッソーリ教育の教具には、この要素がもともと含まれています。例えば、ファスナーのやり方を提示するときに、ファスナーの付いているジャンバーを見せてしまうと他の反応「着る」が混ざってしまうので、着衣枠という用具をしようして「ファスナーの開閉」だけに集中できるようになっています。
③子どもに合わせる
当然ではありますが、一人一人をしっかり観察し、子どもの興味関心や敏感期に合わせたおしごとを提示をしましょう。
④心理教育
私たちの役割は、子どもが内側から生み出すものを教師は外側からサポートすること。自己教育力を発揮できるようにお手伝いすることです。
Step3 記憶をしっかりと定着させる
幼児期は筋肉的な経験によって記憶と記憶が結びつき、定着させることができます。モンテッソーリ教育の教具を使って、体や手を動かして経験することで、無意識に体験・経験してきたことを整理し、その子の中に定着します。学童期はユーモアを用いることで記憶が結びつくんだそうで、いくつかの例を見せてくれました。写真は、何を表現したイラストだと思いますか?笑
基調講演:松浦公紀(まつうら きみとし)先生
基調講演の二人目は日本モンテッソーリ教育綜合研究所、上席研究員である、我らが松浦先生♡
今回の講演テーマは『なぜ人間は争うのか?モンテッソーリ教育でいかに世界を変えられるか。』です。
人間は、一人で生きていくことのできない社会的生物であり、命あるものは本能的に生存しようとするのに、殺し合うのは本能に反しているではないか。という、医師であり、生物学を学んでいたモンテッソーリならではの発想です。
その理由を松浦先生は「オキシトシン」というホルモンが原因ではないか?とおっしゃっています。オキシトシンは、幸せホルモンとも呼ばれていて、母性行動や社会的愛着を促進させることが明らかになっています。乳児保育や0~3のモンテッソーリ教育を学ぶ上では重要な働きを持っているホルモン。このオキシトシンが、争いや戦争を起こすとはどういうことかというと、仲間を愛するが故に、自分の所属する集団を守るために、その他を排除したり攻撃したりしてしまうというのです。
では、阻止するにはどうすればよいかというと、そもそも良いホルモンなのだから、正しい方向に向けられれば良い。解決方法としては、対立より共存の方が、生存本能的に有益(生存しやすい)だと知ること。また、広い範囲を自分が所属する集団とし、守る集団の範囲が地球全体だと認識したら争う必要もなくなるはず。
「私の国は、地球です」byマリア・モンテッソーリ
ある日、モンテッソーリが「あなたの国籍はどこですか?」と聞かれたときに、こう答えたそうです。私たちは地球という国に暮らす市民で、国境はないのだから、自分の国を守るために他と対立する必要はない。第二次世界大戦の渦中を生きたモンテッソーリの主張です。さらに、『永遠に続く平和の構築が教育の仕事である』『平和は政治や、イデオロギーではなく、教育によってのみ達成することができる』と、「教育と平和」という著書で語っています。
モンテッソーリ教育は、ただ「平和」を訴えるのではなく、その具体的な活動の視点を持っています。それは、「違いを知り、1つの対象に多角的なアプローチで視野を広めていく」ということです。CosmicEducation(宇宙教育)として伝えられていますが、「すべてのものはつながっている」=「相互依存」という考え方。自立した個々が相互に依存しあって、お互いの不足を補いあって共存することで、平和な社会が構築されるというものです。
そのためには、「違い」を受け入れていくことが必要です。多様性。「違い」を受け入れるためには「多角的な視点」「幅広い視野」が必要。
多様性を良しとする時代にあって必要な力
モンテッソーリ教育の現場は、ものの見方が多様であることが当たり前になっています。例えば【10】という数の表し方を見ると、もちろん数字の『10』、算数棒の10や金ビーズの10など、多様な表し方見方があります。異年齢児保育(縦割り保育)も多様性の現れの一つです。年齢、背丈、理解力…様々な違いを当たり前のこととして受け入れることのできる人になる最適な環境だと思います。モンテッソーリは『年齢で区切ることは最も残酷で非人間的なことである。なぜならば、この区切りは、競争心や敵対心を生み、人によっては劣等感を抱いてしまうからです』とまで言っています。
子ども達の作品にも「違い」が現れて当然ですよね。一斉画一で管理する教育は「違い」を無視しがちで、同じような結果が現れるように仕向ける教育では、「個」が育ちません。「違い」が現れるためには、「自由」が尊重されるべきですが、それも勘違いされている現状があります。
発達の第一段階から「自由」を与えられなかった人は、大人になってからも意志・意見を持てずに流されて判断するようになってしまいます。多様性を良しとする今の世の中では、判断を個人に委ねられています。だから、自分の意志や考えを持って判断し、行動できる「個の確立」こそが重要であり、それを達成できるのがモンテッソーリ教育です。
まとめ
松浦先生の講演の最後に、日本では平和の象徴として用いられている「折り鶴」を、会場にいた全員で折りました。いきなり舞台に上がって折り方を見せてと言われましたが・・・広い会場で小さな折り紙で見せるのは無理が笑。折り紙を初めて手にする海外の先生方も多く、お伝えするのはとても難しかったのですが、子どものように集中して手を動かし、できた時にとても嬉しそうに見せてくれて、とても穏やかで平和な時間でした。ちょうど、この講演があった日に、イスラエルでの出来事が報道されており、さまざまな国の人が集まる場で平和を考えられたことには意味があるなと感じました。
「折り紙」に関して言うと、子どもの手の育ちや創造、図形や立体の認知力を高めるのに有効だな~と改めて思いました。もっと取り入れていきたいなと思います。
次回がモンテッソーリアジアレポートの最後!根本先生の講演と、印象に残った講演をご紹介します。
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