【運動論③】粗大運動の発達~歩行完了までの動きの獲得~

粗大運動 1*モンテッソーリ教育を学ぼう♪

【運動論②】では、誕生後の赤ちゃんの発達を通して、どのようにして一つ一つの動きができるようになっていくのかということ、大人の目に見える「できた」に至るまでに赤ちゃんの中で起こっていることについてお話しました。

生まれたばかりは3つのことしかできなかった赤ちゃんは、神経系の発達とともにさまざまなことができるようになっていきます。今回は、【運動論①】で紹介した運動の分類において、意志通りに動かすことのできる”随意運動”の一つである『粗大運動(そだいうんどう)』について詳しくお話していきます。
➡まだご覧になっていない方は、こちらから【運動論①】 https://montessori-hoikunotane.com/undou1_motion/

粗大運動とは

誕生後から二足歩行が完了するまでのベースとなる動きのことを言います。言葉にすると「座る」「はう」「立つ」「歩く」というような、大きな動きのことです。だいたい1歳を迎えた頃には歩くのが上手になって、歩行完了となります。そうすると、この大きな動きはいわゆる体育的な運動に代わっていきます。

粗大運動の獲得がもたらすもの

粗大運動を一つ一つ獲得していくことで、二つの信頼を獲得することができます。

1つは『自己への信頼』
例えば、ねんねの頃の赤ちゃんが、それまでは、興味のあるものがあっても自分で取りに行くことができずに大人が察して取ってくれるまで触れることができませんでした。しかし、寝返りができるようになったことで、自分の触りたいものを自ら手に取れることができるようになりました。

“自分で取れる”ということが『自立』であり、“自分で取れる、ぼくってすごい!”という『自尊心』を高めることに繋がります。このように、一つ一つの動きの獲得は『自己への信頼』を獲得することになります。

もう一つは『環境への信頼』
自分で自由に動くことができるようになると、“なんか面白いものがいっぱいあるぞ!”“思い通りに動いても大丈夫な場所なんだ!”と、「ぼくがいる、この場所はいいところだね」という『環境への信頼』となります。

赤ちゃんがこの二つの信頼を獲得することを保証してあげるには、赤ちゃんが過ごす環境が安全である必要があります。特にご家庭では難しい部分もあるかと思いますが、「そこはダメ!」「触っちゃダメ!」と言われるような環境では、赤ちゃんの自由な動きからもたらされる動きの獲得、この二つの信頼を獲得できません。ですから、できる限り危険なものは触れられない状態にして、自由に動ける環境を用意してあげることが理想的です。

発達の順序と方向性

粗大運動の発達には順序と発達の方向性があります。

粗大運動 発達の順序と方向性

【運動論②】でお話した、神経細胞の繋がりあい“髄鞘化(ミエリン化)”が関係しています。粗大運動は上から下へ、頭から足先へと発達していきます。つまり、上から下へと時間をかけてゆっくりと神経細胞が繋がっていくというわけです。

粗大運動の発達

上から下へを意識しながら、赤ちゃんの発達を見ていきましょう!

首が座る→寝返り

まず、3ヶ月ごろを目安に首が座って、思い通りの方向に顔を向けられるようになります。それから肩(腕)を大きく動かすようになって色々な姿勢ができるようになり、仰向けの状態からうつ伏せになって戻れなくなるのをくり返すうちに、自由自在に寝返りが打てるようになります。この寝返りだけでも、首→肩→胴→背中→腰→上腕部というように神経細胞が上から下へ繋がっていくことがわかりますね。

ずりばい・お座り・はいはい

寝返りが自由に打てるようになることには、うつ伏せの状態で遊ぶことも増えてきます。うつ伏せになるとそれまで天井しか見えなかった赤ちゃんの視界はぐんと広がり、興味を持つものが増えてとっても刺激的です。「あれはなんだろう?」という興味が動きの出発点となり、そこに向かっていくうちにずりばいができるようになっていきます。最初のずりばいは、腕全体を使って上半身だけを使って進むような状態です。

ずりばいができるころ、お座りも短い時間からできるようになってきますね。またまた視界が変って、赤ちゃんの興味も広がります。そして、お座りができるということは、両手が自由に使えるようになるわけです。このあたりから、微細運動(次回お話します)の活動が入ってきます。

ずりばいは、腕だけで進む状態から進化していって、足の力で進むことができるようになっていきます。だいぶ腰から下にも神経が通って力が入るようになってきました。主に膝を使って床を蹴って進むようになります。この運動は大きくなるとほとんど必要としない動きですが、たくさん経験すると体幹をしっかりさせてくれるので、自由にずりばいできる環境を用意してあげたいですね。また、膝を使うので、膝が出ている衣服で、床はフローリングのほうがおすすめです。

下半身にも力が入るようにあり、腰があがるようになってはいはいを始めます。はいはいは、ずりばいよりも床の素材に左右されずに進むことができ、より自由に動き回れるようになります。そして知らず知らずに腕で体を支える力が付き、親指で床を蹴って進むことで足先にも刺激を与えてくれます。

つかまり立ち・つたい歩き

そうやってはいはいで知らないうちに訓練していたおかげで、ついに立ち上がるのです!少し上にあるものに興味を示して、そこに向かって手を伸ばすうちに立ち上がります。立つのが容易になると、器用に体を何かで支えて立ったまま遊んだり、そのうち足首に力が入るようになって足を横に出して進むようになります。伝い歩きの始まりですね。伝って歩くために自分の体を支える大事な役割が、何かものを掴むこと。手の平、手指にしっかり力がはいるようになっていきます。

立つ・歩く

次第につかまらずに数秒立っていることができるようになります。そして、バランスを取りながら恐る恐る前へ一歩を踏み出し、何度転んでも立ち上がり、挑戦をくり返すうちに歩けるようになっていきます。歩行の完了です!

まとめ

歩けるようになると、動きだけでなく一気に子どもらしくなったと感じませんか?歩行が完了するまでの過程で、赤ちゃん自身が挑戦をくり返し、自分に自信を持つことができるようになるからではないかと思います。「自分はなんでもできる!」という根拠のない自信を身につけ、次々と挑戦していくための力が身に付いた証です。この尊い一年の歩みを、文字に起こすだけでも感動してしまいます。赤ちゃんってすごいですね!!

次回は、微細運動について書いていきたいと思います。

コメント

  1. […] ※【運動論③】はこちらから→ https://montessori-hoikunotane.com/undou3_sodaiundou/ […]

タイトルとURLをコピーしました